こんにちは。チクシ ケンです。
今回は、建築士という職能についてお話してみたいと思います。
建築士というと一般的には一級建築士を連想される方も多いかも知れません。
一級建築士の資格を持っていることがすごいことのように言われることがありますが、建築業界の中では、この資格のことを「足の裏についた米粒」に例えられたりします。取らないと気になるけど、取ったところで食えない!という残念なお話です。その割には取得するのに相当苦労するのですが・・・。
この言葉の意味するところは、一級建築士が看板を掲げたからと言って、建築設計の仕事が受注できるわけではないということです。私の勤めている会社では、給料が安いことを皮肉って使われていることもありますが・・・(-_-;)
つまりは、一級建築士という資格は一定規模の建築を設計するために必要な条件ではありますが、その他にもさまざまな能力が必要ということです。業務の受注から設計、施工また完成後のアフターケアまで言うと実に様々な能力が求められることになります。主だった能力は次のようなことが考えられます。
考えやイメージを図やスケッチで表現する能力、CADやBIMを始めとした製図スキル、営業力、プレゼンスキル、関係者との折衝能力、条件整理、建築基準法をはじめとした法規への遵法、施主・行政機関・メーカー等との折衝能力、社会学、心理学、経済学、などなど・・・切りがないですが、建築用途ごとに求められる計画上のノウハウでいうとあらゆる業種の建築を知ることになるので、その幅は無限に近いですね。
建築設計者が最も求められる職能とは何か?
当然、建築のデザインでしょう!と思われる方が多いと思います。
当然それも必要だと思いますが、多くの設計者に求められる最も大切な能力は、なんと言ってもコミュニケーション能力かなぁと思います。20年以上建築の設計に携わっていて、歳を負うごとにそれを実感してしまいます。
通常、建築の設計に掛る費用は、個人レベルで言うと大金になります。施主は、行政であったり、企業であったり、個人であったり様々ですが、施主の責任者にとって設計者は責任のもと設計を受けることになります。
ましては施主が個人の場合は、相当なプレッシャーです。施主に信頼をしてもらいながら自分がベストと思う設計を進めるためには、コミュニケーション能力は欠かせません。
また、建築基準法や都市計画法や各行政で定められた条例など、法に沿った設計を行うためには、指導・審査する側の方々とのコミュニケーションは非常に大事になります。
工事現場ではより多くの関係者と密なコミュニケーションが必要になります。特に、若い設計者だと施工者側の方が圧倒的に知識が多いのでバカにされることも多いので、少しでも貫禄を付けるために髭を生やしてみたり姑息な手段に出たことがありますが、相手もその道のプロなので力量はすぐ見抜かれてしまいます。
そのころ私が身に着けたのが、熱意をもって人と対話することです。知識やスキルで勝てない場合、やはり人を動かせるのは、熱意だと思います。
少し言い方が悪いかも知れませんが敢えてストレートな表現をしてみます。後輩達に良く話すのですが、建築の設計者は、人からお金をもらいながら、人のお金を使い、人を動かして建築をつくるのです。
設計者は、釘一本も打つことなく、自分の中にあるイメージを紙面に書き上げ、それを人に伝えながら納得してもらい、多くの人を動かしながら建築をつくるビジネスです。コミュニケーション能力が必要なことはわかっていただけるのではないでしょうか。
以上で、今回は終わります。最後まで読んで頂いてありがとうございます。
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