こんにちは。チクシケンです。
どんな業界でもビジネスは同じ構成で、人が必要としているもの、あるいは欲しがるものを提供することで価値が生まれ、その引き換えとして金銭を得ます。需要が多く、他に同様な提供ができる人がいないと、価値がより高く評価され、多くの対価を手にするわけです。
では、建築の設計で言えばどうでしょうか?一部の売れている建築家は引手数多で、きっとクライアントに困ることはなく、むしろ設計料を上げてでも依頼されるケースが多いと思います。私自身は設計を始めて25年経ちますが、会社勤めのため仕事が無くて困ったことはほぼありません。(仕事を得るための仕事もたくさんして来ましたが(笑))
独立して個人で設計事務所を経営されている人の多くは、生活の糧として仕事を選んでいる場合ではなく、どんな仕事でもありがたく受ける、場合によっては下請け仕事をしている方も多いのではないでしょうか。
規模によりますが、建築の顧客は多くのお金を必要とします。顧客は企業や公共団体のこともあるし、個人の場合もあります。設計者は責任が多く、通常は1点モノを設計するので、失敗することもあり、リスクの高いビジネスと言えると思います。
リスクが高い分、リターンが大きいかというと必ずしもそうとは言えません。顧客からすると建物自体へのコストは理解するものの、設計自体への価値を理解されない場合が多いです。衣類や料理のようにその物の値段にデザインや調理のコストもオンされているものと違い、手間暇が掛かる設計なのに、そのコストについて価値を理解してもらえないことは何とも悲しいですよね。
でもこれは一概に理解してくれない顧客が悪いとも言い切れません。むしろ私達は建築の設計を行うことで、顧客へ付加価値を提案し、そのための対価を正当に主張すべきだといつも考えています。説得すると言ってもただ単に主張するのではなく、顧客が納得の行く言葉でお伝えすべきだとも考えています。
私にとっての最大の強みは顧客への想いの強さかなぁ?!と自分では思っています。技術・知識・デザインでは太刀打ちできなくても、想いの伝え方では負けない自信があります。顧客のことを考えすぎると、場合によっては私が設計しない方が、相手にとって幸福なのではないか、と思ったプロジェクトは私の方からお断りしたことがあります。喉から手が出るほど、欲しかった場所で、欲しかった用途なのに・・・
クライアントの建築や設計者への敬意が薄いと感じた瞬間に、すっと気持ちが覚めてしまった。相手がどんなお金持ちでも、そういう相手には本気で向き合えないのです。
幸いなことに、こんな私にも繰り替えしオファーをくれる方もいます。私はそういう方に正面から人生を掛けて向き合いたい。そんな泥臭く、馬鹿正直な私ですが、死ぬまで建築を考えて行きたいと思います。
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