こんにちは。チクシ ケンです。建築のクライアントとはどんな人達か普段聞く機会はなかなかないと思います。建築設計を20年以上やって来た私の経験をベースにお話してみたいと思います。
私は組織設計事務所に勤めていますが、設計の対象としては戸建て住宅から巨大な競技場であっても何でもあり得ます。もちろん受注できればの話ですが…。もちろん事務所によって得意不得意があったり、受注したタイミングで適切なスタッフが充てられるかという問題はあります。
建築のジャンル
私の勤めている会社は、元々公共からの受注が多く、入社当時は7割は公共プロジェクトでした。庁舎をはじめとして公立の学校、病院、劇場、図書館などがその代表格でしょうか。私自身、庁舎、劇場、図書館、病院、コンベンションセンター、体育館、プールなど様々なプロジェクトに関わって来ました。通常の場合、施主は行政になるので、設計料や工事費は民間に比べると一定水準は確保されていますが、知事や市長、議員や住民といった多くの方々へ設計説明が必要なため、きちんとした手順を踏んだ設計が必須になります。
一方、民間プロジェクトについては、施主の了解が得られれば、設計者の裁量に任されるケースがあります。ただし、あとあと責任問題にもつながりやすいので、リスク回避としていう点においては、やっぱりきちんと説明しながら設計した方が、お互いに安心できると思います。私は民間プロジェクトの経験も多く、個人的には民間プロジェクトの方が好きです。最初に担当したプロジェクトは民間の病院でした。ほかには、企業のオフィス、保養所、宗教施設、老健施設、障がい者施設、など様々で、ありがたいことに多くのクライアントはリピーターとなって再び設計を依頼してもらっています。私から見て民間プロジェクトのクライアントとはどんな人か、お話したいと思います。
民間建築のクライアントに見られる3つの共通点
ひとくくりに民間建築のクライアントと言っても、個人事業主であったり、大きな組織であったり、大きな組織の中の一部であったり様々です。私の経験から、クライアントに共通な点として以下の3点が考えられます。
①大きなお金を使おうとしていること
②事業のスタートアップあるいは拡大する局面であること
③多くの人を引き連れたリーダーであること
3点はつながっている点もありますが、クライアントとうまく折衝する上で非常に大事なことであり、私自身が同じクライアントから繰り返し設計を依頼することができるのは、設計能力が優れているからではなく、これらを意識した上でコミュニケーションをまめに取りながら設計しているからだと考えています。
では、それぞれについて説明して行きたいと思います。
①については、建築のプロジェクトは銀行から紹介を受けることもあるくらい、クライアントからすると大きな買い物になります。その分、特に民間の場合余程潤沢な資金がない限りはコストにシビアです。皆さん無駄や損をしたくないとほぼ間違いなく思われています。中には施主の予算内で設計することに終始してしまう設計者がいます。それはそれで必要なのですが、クライアントから想像を超えた満足を与えることは難しいです。私ならまずは何よりも施主の事業や存在価値を最大限にする建築を真剣に考えます。結果、思うような提案になかなかたどり着けないことはありますが(^_^;)・・・とにかく考え続け、考えたことをクライアントに素直にぶつけるようにしています。その上で必要な工事費、設計料を伝え、グレードを下げてでもコストを下げる必要があればできる限り努力します。この一見無駄に思える検討プロセスが設計者としての誠意だと私は考えています。
②については、多くのクライアントにとって事業を拡大する攻めの局面と言えます。建築のもつ魅力、例えば人を引き付けたり、その事業のもつコンセプトに沿った建築の設計とすることで、その局面を加速をさせたいと考えています。また場合によっては、事業自体に変化が必要となったため、建て替えされていることもあります。特に設備的に時代遅れになったり、既存の躯体では納まらない場合に起こります。この場合は、その業界の新しい流行りを知る切っ掛けにになります。
③については、色んな側面で重要な要素と考えています。リーダーとは、会社の社長が該当します。(打ち合わせで直接やり取りするのはその部下かも知れませんが。)。事業の拡大に成功している人は、私達が思う以上に多くの人と一緒に仕事をして来た経験をお持ちです。またご自分の事業に関してはプロ意識を持たれていています。当然ながら事業の拠点となる建築の設計者が、その方が更に拡大しようとしている事業のパートナーとしてふさわしいかどいうかはいつも見られているという認識を持つべきだと考えています。公共建築の場合は、そこまで求めてないよ。とあっさり言われてしまうことがありますが…。
今回は以上となります。皆さん最後まで読んで下さりありがとうございます。さらに何でも良いのでコメントを残して頂けたらうれしいです
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